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東京簡易裁判所 昭和31年(ハ)1833号 判決

原告 ブロツク建築株式会社

右代表取締役 藤井幸次

右代理人弁護士 和田一郎

被告 日本工罐株式会社

右代表取締役 林久

右代理人弁護士 金子文吉

主文

被告は原告に対し金弐万六百六拾四円及之に対する昭和三十一年十一月六日以降完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

此判決は仮に執行することができる。

事実

≪省略≫

理由

第一、原告のブロツク建築に対する所有権について

一、変電所工事請負契約について

被告会社代表取締役本人林久の供述及之によつて真正に成立したと認める乙第一号証の記載を綜合すると被告会社は昭和三十一年五月二十八日訴外同栄建設株式会社に対し東京都荒川区尾久六丁目六六一番地に被告会社変電所を受渡期日同年六月三十日建坪五坪、外部防水モルタル塗装、合掌は鉄骨扉は鉄製其他見積書の通りとして代金(報酬を意味する)金弐拾七万円と定めて請負わしめ即時金拾万円を右訴外会社に交付した事実を認定することができる。

二、訴外会社と原告会社との下請負契約について

証人鈴木康正の供述及之によつて真正に成立したと認める甲第二号証の記載を綜合すると訴外同栄建設株式会社は昭和三十一年七月初頃前第一に判示する請負工事の一部を原告会社に請負(下請負)わしめた事実、下請負契約の内容はブロツク積工事厚一五センチメートル重量面坪十三、単価弐千七百円合計金参万五千円(百円値引)片面化粧、附帯条件見積書記載の通り、(甲第二号証見積附帯条件)材料原告持込、図面どおり施行の定めであつた事実、訴外会社より原告に対し現金弐万円を下請負代金の一部として前払をなし且つ外に金額壱万五千円の約束手形を振出交付したが不渡となつた事実を認定することができる。

三、工事完成について、工事引渡未了について

原告が前二に判示する下請負契約の趣旨により材料持込にて工事を施工し且つ工事進行中、注文図面通りに施行すれば更に面坪が一坪九八七多くなることが明かとなり之を前二の単価によつて計算すれば五千参百六拾五円増加となり外に地墨及堅遣方の手間弐百円、出入口上の仮枠入手間百円追加分合計金五千六百六拾四円となる事実、同年八月十四日全工事(追加分を含む)が完成した事実、同栄建設株式会社に於て追加分工事をなす必要ある場合には之に支払をなすことを承諾しておつた事実、工事が完成したけれども訴外同栄建設株式会社が事実上解散し経済力を失い事務所より退去し所在不明となつたため工事引渡が不可能となつた事実は前記証人鈴木康正の供述及之によつて真正に成立したと認める甲第三号証の記載によつて認定することができる。

四、ブロツク建に対する所有権者について

原告が前三に判示するブロツク建築物を材料持込、血と汗とによる労働力を加えて建築したものであり完成工事の引渡をなさないものであるから其建築完成した工事(昭和三十一年七月十四日)完成、独立建築物)につき完全なる占有及所有権を持つていたこと明白である(大審院民事判決抄録第二二巻四三〇四頁、第五二巻一二一六五頁、第五六巻一二七八一頁、第六一巻一三四六一頁参照)。

右ブロツク建築物の全請負代金(報酬)は最初のは下請負代金参万五千円追加分金五千六百六拾四円である。即工事完成の日(三一年七月十四日)現在合計金四万六百六拾四円であつた。原告の右ブロツク建築物に対する所有権は喪失したとの具体的なる事実の発生しない限り存続するものと推定する(ブツテイング立証責任の基磯理論独乙民事訴訟法雑誌第一三巻一七頁以下ベツツインガー立証責任論五四頁参照)。

第二、附合について

一、被告会社に属する不動産について

前第一の一に判示する尾久町六丁目六六一番地の土地(以下甲と称する)に被告会社が工場(以下乙と称する)を有し工場に使用するため訴外同栄建設株式会社を請負人とし後訴外井口雅を請負人として変電所(以下丙と称する)を建築し訴外同栄建設株式会社が原告会社に変電所の内ブロツク積建築(以下丁と称する)を下請負せしめて建築し井口雅が変電所丙の内ブロツク積建築以外の屋根、扉、モルタル塗その他の工事(以下戊と称する)を完成するに至つたことは当事者双方の主張自体から認定せられるところである。

敷地甲と工場乙が不動産であること疑を容れない。変電所丙(ブロツク積造屋根鉄骨スレート葺平家建一棟建坪五坪三合六勺完成により契約より坪数が増えている)も不動産である。現に変電所が土地定着物として保存登記がなされている事実は後記第三の五判示のとおりである。被告会社代表取締役本人林久の供述によると被告会社が昭和三十一年七月末日天竜建材株式会社(虚無人)こと井口雅からブロツク積建築丁と其余の工事戊を含む変電所丙の引渡を受けた事実が認定せられる。而してブロツク積建築丁が「原告の所有に属すること前第一判示の通であるから被告会社は変電所丙の引渡を受けても其内にあるブロツク積建築物の所有権を取得し得ないことわりである。それ故昭和三十一年七月末日被告会社が所有権及占有権を適法に取得したところは変電所丙の内ブロツク積建築物丁を除く部分である。

昭和三十一年八月一日現在所有権という点から見ると被告会社は(一) 敷地甲(二) 工場乙及(三) 変電所丙(但ブロツク積建築物を除く)の権利者である。

二、原告会社に属する不動産について

ブロツク積建築物丁が原告会社の所有に属することは前第一判示の通である。

三、本体と附合物との関係について

(一)  場所的関係について

附合物が本体の内にあるか或は本体と極めて接近する場所に存することは附合の一の要件である(独乙帝国裁判所判事団編民法第一巻一二二頁参照但主物従物に関する)

本件に於てブロツク積建築物丁は敷地甲の上に建築せられ工場乙に接近しており変電所丙の内に存すること前一判示の通である。

(二)  経済的関係について

附合物が本体にとり経済上の利用価値があることは附合の他の要件である(同書一二一頁参照)

本件に於てブロツク積建築物丁を含む変電所丙は工場乙のために建築せられたものである。丙は乙のために建築せられ丁は丙の主要なる(経済上の観察に於て)部分である。即ブロツク積建築物は変電所にとり大いなる利用価値があり変電所は工場にとり大いなる利用価値がある。

(三)  持続性について

附合物は臨時の用途にあてるために建築せられたものでなく持続性を有することを要する(同書一二二頁参照)

本件に於けるブロツク積建築物丁は木造にあらざる建築物であり所謂「堅固なる建物」である。持続性があること明白である。

(四)  取引上の通念について

仮令法律の要求する他の条件が凡て備わつたとしても即時に附合が生ずるものといえない。

此上に更に「取引上の通念」によれば附合せしむることが適当とする場合に限り且つ「取引上の通念」として附合せしむることが適当とする時期が来たとき初めて附合が生ずるとなすべきは当然である(前出民法一二二頁、独乙帝国裁判所民事判例集第七六巻三三頁、第六九巻一二一頁同裁判所判決独乙法律週報一九〇九年二六七頁参照、但機械に関する)

被告会社は敷地の占有所有権者であり工場の所有権者であるから変電所を必要とする。変電所を必要とするが故に之が建築を企図したのである。之に反し原告会社は出損したところを回復することを必要とし回復することを以て十分とする。ブロツク積建築物の所有権を永久に保持することは終局の目的でない。

しかも敷地に権利を持つていない限り其地上建物の所有権を保持することは不可能である。それ故に取引上の通念として附合適状に達した時期到らば原告のブロツク積建築物に対する所有権を剥奪し之を被告に与え他方原告に利得償還請求権を与うる必要がある。之れ取引上の通念として認められるところであり認めるにつき十分なる根拠がある。

附合を生ずべき一切の条件が具備していても直ちに附合を生ぜしめず当事者の「自治」によつて法律関係を調整せしめ平穏且自由意思により所有権を移転せしめることは必要である当事者間に話合が進行していたとき話合の経過を無視して一方の所有権を剥奪して他方に与うることは個人間の平和なる状態に干渉するものである。終局的に話合の結果が得られないことが明かになつたとき初めて附合適状の状態にあるとする。之「取引上の通念」である。原告会社代表者本人藤井の供述(第六項)によると昭和三十一年八月七日原告と被告間の交渉が終局的に結果を得なかつたものであるから「取引上の通念」により昭和三十一年八月七日附合適状にあつたものであると認定する。

(五)  不分離、一体の関係について

附合物が本件と一体をなす状態にあることは附合の一の要件である。附合物は本件と運命を共にする場合でなければ附合を認めてはならない(独乙帝国裁判所民事判例集第六九巻一二〇頁、第七四巻四〇二頁参照)附加した物を容易に分離して運搬し去ることができるならば、何を苦んで複雑なる法律関係を生ぜしむるか

本件に於てブロツク積建築物丁を解体することは事実として不可能でない。併乍ら之を解体すればブロツクの各々が破損する。解体すれで原告会社はブロツク積の手間賃、ブロツク材料の代金、ブロツク積の解体費を失うことになる。他方被告会社は此間変電所を持たないことになり改めて更にブロツク積建築物を建築しなければならない。ブロツク積建築物丁を解体することは経済上の観察として不可能である。当事者双方のためにも社会経済の上からも解体すべきものでない。ブロツク積建築物丁は以上の意味に於て変電所丙と不分離の関係にあり変電所丙とブロツク積建築物丁とは運命を伴にする関係にある。丁は丙の一部となつた。

(六)  主と従の関係について

民法第二百四十二条によると「不動産の所有者は其不動産の従として之に附合した物の所有権を取得する」而して不動産も動産も物である。

原告会社が敷地甲の上に昭和三十一年七月七日頃材料を搬入し同月十四日頃ブロツク積工事を完成した事実は前記原告会社代表者本人の供述によつて認められる。昭和三十一年七月十四日現在ブロツク積建築物丁は独立した一個の不動産である。原告会社が之につき所有権を持つていること前第一判示のとおりである。

訴外井口雅は此ブロツク積建築物丁の上に加工し変電所として使用するに足る建築物となし天竜建材株式会社の名を以て保存登記を経由している。変電所(ブロツク積造屋根鉄骨スレート葺平屋建一棟坪五坪三合六勺)は不動産である(前第二の一)

而して(一) ブロツク積建築物丁請負代金が金四万六百六拾四円であることは原告会社代表者本人の供述によつて認定せられる。(二) 変電所丙の元請負代金が同栄建設株式会社の場合金弐拾七万円、井口雅の場合弐拾九万四千六百円であることは真正に成立したと認める乙第一第二号証によつて認められる。此内から右(一)に判示する下請負代金四万六百六拾四円を控除すると同栄建設株式会社の施工すべかりし且井口雅の施工した部分の工事代金は夫々金弐拾弐万九千参百参拾六円及弐拾五万参千九百参拾六円である。

主物従物の区別且関係は経済上の立場から決定すべきものであるから変電所丙(但丁を除く)が「主たる不動産」でありブロツク積建築物丁は従たる物(不動産)である。

敷地甲工場乙変電所丙(但丁を除く)が「主たる不動産」でありブロツク積建築物丁は従たる物(不動産)である。

(七)  附合について

昭和三十一年八月七日現在変電所丙には二個の所有権が併存する。民法を貫く「権利統一の法則」(エンデマン民法第二巻五四二頁参照)から此ゆがんだ法律関係を正常化し主たる不動産の所有権者である被告の単独所有となすべきこと当然である。

而して取引上の通念から見て附合適状にあると見られる時期即昭和三十一年八月七日を以て原告はブロツク積建築物に対する所有権を喪失し被告之が所有権を取得した。附合の各条件が存すること前(一)乃至(六)判示のとおりである。

(八)  過多、中、正について

附合より被告の側に過多(ヒユペルボレ)を生じ原告の側に不足(エレイブシス)を生じた(アリストテレス、ニコマコス倫理学高田三郎訳六三、七七頁参照)此状態は中(メソン)でない不正(アヂコン)なる状態である。不均等(アニソン)という意味に於て不正である。

被告は「不正なる状態をもたらす規定」に原因して所有権を取得した。言葉を換えていうと「正当なる原因」なくして利得したものである。

附合は本来「権利統一の法則」によつて法律関係の複雑化を防止し取引の安全を保護することを第一義とする。損失者(本件に於て原告)に犠牲を払わしむることも亦止むを得ないところである。併乍ら「各人をして其有すべき権利を得せしむる」ことが、正であり法律であるから犠牲を払つた損失者に対し返還請求権を与えることが必要である。かくして正(デカイン)は不均等を是正し過多の状態にある者(利得者)から過多を切取り不足する者(損失者)に之を与うることになる。民法七百三条に所謂「法律上の原因なくして」とあるは前示の如き「正当なる原因なくして」という意味である。利得者と損失者との間に関する限り(取引の安全という立場を全く度外視して)「正当なる原因なくして」という意味である。

第三、不当利得返還請求について

一、損失者について

原告会社は前第二に判示する附合により昭和三十一年八月七日ブロツク積建築物に対する所有権を喪失した。

二、利得者について

被告会社は前第二に判示する附合により昭和三十一年八月七日ブロツク積建築物に対する所有権を取得した。

三、因果関係について

前一に判示する所有権の喪失と前二に判示する所有権の取得との間には因果関係がある。一方の所有権の喪失がなければ他方の所有権の取得がなかつたこと必然である。本件に限らず附合の場合一方に於て所有権を喪失し他方に於て之を取得する。即常に因果関係がある。

民法第二百四十八条は附合の場合常に通常、且客観的因果関係が存在することを予定している。

四、正当原因の不存在

被告がブロツク積建築物につき所有権を取得するにつき「法律上の原因」がなかつた事は前第二の三の(八)判示のとおりである。民法第二百四十八条は附合の場合、常に法律上の原因がないことを予定している。

五、第三者介在の有無について

訴外井口雅介こと井口雅が(供述調書一三頁によると井口雅介の戸籍名は井口雅である)天竜建材株式会社の名を以て被告会社から(訴外同栄建設株式会社が被告会社から金拾万円也を受領したまま所在を晦ました後)尾久変電所新築工事を請負つた事実、該請負契約につき契約書を作成した事実、右契約の内容は(一) 工事の目的、被告会社尾久変電所新築工事(二)請負金額弐拾九万四千六百円、(三) 着工期昭和三十一年七月六日、(四) 竣工期限同月十九日、(五) 工事金支払方法、契約と同時に代金額の三分の一竣工と同時に残全額支払う、(六) 先に被告会社から訴外同栄建設株式会社に前渡した金拾万円(前第一の一判示)は新請負人井口雅に於て受領したものと看做し被告会社に受領証を交付する定めであつた事実並に新請負人井口雅が請負つた仕事(但原告会社の完成した本件ブロツク積建築物を除く)を完成して被告会社に引渡を了した事実は証人井口雅介こと井口雅の供述並に之によつて真正に成立したと認める乙第三号証の一、二の記載を綜合して認定することができる。

然るに天竜建材株式会社が実在しない事実、新請負人井口雅と原告会社との間には本件ブロツク積建築に関しては下請負契約も其所有権移転に関する如何なる契約も存在しなかつた事実、原告会社に対する関係に於て訴外井口雅が同栄建設株式会社の地位(下請負契約に於ける注文主たる地位)を承継しなかつた事実並に原告が井口に対して完成した本件ブロツク積建築を引渡さなかつた事実は右証人井口雅の供述、原告会社代表取締役本人藤井幸次の供述を綜合して之を認定することができる。

而して不当利得返還請求権成立の消極的要件として「第三者が利得者と損失者との間に介在しないことを必要とするものであるが(独乙帝国裁判所判事団編民法第二巻第二冊四九九頁参照)前認定のとおり訴外井口雅が被告会社との関係に於ては同栄建設株式会社の地位を承継する旨の意思表示をしたけれども井口と原告会社との関係に於ては何等の法律関係も生じなかつたものであるから訴外井口雅は本件不当利得返還請求権については利得者と損失者との間に第三者として介在しないこと明かである。

仮令天竜建材株式会社(虚無人)が前第一の四に判示する本件ブロツク積建築物を含む変電所につき所有権保存登記をなしたとしても(被告会社代表取締役本人林久供述調書第七項)該建築物の所有権が登記によつて天竜建材株式会社に移転するいわれなく又従つて之により天竜建材株式会社(仮に実在するとしても)が原告会社(損失者)と被告会社(利得者)との間に第三者として介在する余地がない。

第四、償還の範囲について

一、主たる請求について

原告会社は「請負代金四万六百六拾四円の内金弐万円を訴外同栄建設株式会社から受領している」ことを自認するものである。訴外会社は被告会社から受領した元請負代金前渡金拾万円から金弐万円を原告会社に支払つている。此事実は証人鈴木康正の供述、被告会社代表者本人の供述を綜合して認定せらるるところである。被告会社が昭和三十一年八月一日以降現在に至るまでブロツク積建築物を含む変電所を使用している事実は被告会社代表者本人の供述によつて認定せられる。

被告会社がブロツク積建築物所有権取得によつて受けた利益は金四万六百六拾四円である。残存する利益は金四万六百拾四円であると推定する。

原告会社は本訴に於て金四万六百六拾四円の内金弐万六百六拾四円の返還を求めている。

此点に関する原告の請求は理由がある。

二、遅延損害金の請求について

原告会社が昭和三十一年八月七日を最後として被告会社に対し本件ブロツク建築物が原告会社の所有に属することを明かにし且之を基礎として交渉して来たこと前第二の三の(四)のとおりである。被告会社は昭和三十一年八月七日本件ブロツク建築物が原告会社の建築したものであることを知つていたものである。被告会社は遅くも其日に於て悪意の利得者である。

原告会社は本訴に於て訴状送達の翌日から完済まで右金弐万六百六拾四円に対する年五分の割合による遅延損害金の支払を求めている(民法第七〇四条、大審院民事判決抄録第七六巻一七六三二頁参照)。

此点に関する原告会社の請求も正当である。

原告の請求は正当であるから之を認容する。

訴訟費用の負担及仮執行の宣言につき、夫々民事訴訟法第八十九条及第百九十六条の規定を適用する。

第五、事情

訴外同栄建設株式会社代表取締役であつた河村邦成が被告会社代表取締役林久の友人であつた事実は被告会社代表者本人の供述によつて認定せられる。

河村邦成が被告会社と訴外井口雅との間の変電所新設工事請負契約締結に際し立合人として契約書に署名捺印している事実は真正に成立したと認める乙第二号証によつて認定せられる。

河村邦成が被告会社から請負代金の一部として金拾万円を受領したまま工事に着手せず其内から弐万円を原告に渡して同栄建設株式会社の所在を晦まし原告に対して請負代金弐万六百六拾四円の支払をしなかつたものである。

之によつて生じた損害を善意誠実に工事を完成した原告に負担せしむべきものであるか、それとも河村と友人の関係にあり現に変電所を使用して利益を得ておる被告に負担せしむべきものであるか事甚だ明白であろう。

事情としても前示認定に誤はない。

仍つて主文の如く判決する。

(裁判官 庄子勇)

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